企業におけるイントラネットソリューションとして、JiveとSharepointは代表的な製品です。両者ともにチームやプロジェクトごとに情報を管理するポータルサイトを提供していますが、情報共有と業務効率化の観点から見ると、いくつかの大きな違いがあります。
セルフサービスで運用できる
JiveとSharepointはどちらも、業務やサービス、プロジェクト単位でグループを作成して情報を管理できます。ポータルサイトを使えば、必要な情報を整理することができます。
しかし、SharepointはIT部門のサポートがなければ、新しいグループやサイトを作成するのは中々大変です。そのため、一定量のITサポートコストとリソースが必要になります。
一方、Jiveはユーザー自身が簡単なトレーニングを受ければ、誰でも簡単にグループを作成して運用できます。ITの手を借りずに、必要なタイミングですぐに新しいグループを設定したり、既存のグループを修正したりできるのが大きな利点です。
事例:自社製品ポータルサイトの構築
A社では、自社製品に関する情報を社内で共有するために、製品ごとにJiveのグループを作成していました。新製品が発売される度に、営業部門や製品企画部門のメンバーが自主的にJiveにグループを立ち上げ、関連資料を集約していきました。
一方、B社ではSharepointを利用していましたが、新しいサイトの作成はIT部門に依頼する必要があり、作業が遅れがちでした。新製品の市場投入時に必要な情報が遅れて共有されてしまうケースも多く、営業活動に支障をきたすことがありました。
フロー情報とストック情報がシームレスに管理できる
Sharepointは基本的にストック情報(ファイルやWebページなどの静的な情報資産)しか扱えません。一方、フロー情報(コミュニケーションの経緯やディスカッションなどの動的な情報の流れ)はメールやTeamsなどのチャットツールを利用することが一般的です。しかしメールやチャットの内容自体はストック情報として扱えず、Office文書やNoteなどに反映させて保管する必要があります。
Jiveはブログ、ディスカッション、質問など、用途に応じたさまざまなコンテンツタイプが準備されています。ここで行われたコミュニケーションの内容は、そのままグループの中に蓄積されていきます。つまり、フロー情報とストック情報が同一の場所で一体的に管理できる、というわけです。
事例:新製品プロジェクトでの情報共有
C社では、新製品の開発プロジェクトにおいて、Jiveを活用して設計情報やタスクの進捗状況、関係者間のディスカッションなどをグループ内に集約していました。メンバーはブログで設計について意見を交わし、ディスカッションでは不明点を解消。製品の仕様書やスケジュール表などの資料はファイル共有機能でグループに保管していました。このように、開発に関わる動的な情報の流れと静的な資産の両方が、ひとつのグループにすっきりと収められていました。
一方、D社ではSharepointとOutlookを使い分けていました。設計がまとまった段階でSharepointにドキュメントを格納し、それ以前のディスカッションの経緯はメールのスレッドで確認する、という具合でした。結果として、情報が分散してしまい、後から関係者全員が同じ状況を把握するのが難しくなっていました。
属人化されたフォルダ vs カテゴリ&タグ
Sharepointでは、ファイルの管理にフォルダ構造が利用されます。明確で分かりやすいフォルダのルールを作れば良いのですが、現実には、メンバーそれぞれの判断でフォルダが作られてしまい、どこにどのファイルが保管されているのか分からなくなることが多いです。
一方、Jiveではグループが大きなフォルダのような役割を果たします。ブログ、ディスカッション、質問など、用途に応じた適切なコンテンツタイプにコンテンツを投稿することで、間違った場所に情報が投稿されるリスクが低くなります。さらに、カテゴリやタグによる分類に加えて、コンテンツに対して公開/期限切れなどのステータスを設定できるので、業務に即した情報分類が可能です。
事例:バラバラだった営業資料の一元管理
E社の営業部門では、以前はSharepointのフォルダに資料をアップロードしていました。しかし担当者によって、フォルダ構成や命名規則がバラバラだったため、最新の資料がどこにあるのか分からず、探すのが非常に手間がかかっていました。
そこでJiveに移行し、営業活動に関する情報を顧客別や商材別のグループで管理するようにしました。ディスカッションでは案件の状況を共有し、関連資料はファイル共有機能でグループ内に保管。公式リリースされた資料には「公開」ステータスを付けることで、最新かどうかが一目で分かるようにしました。カテゴリ分けもでき、必要な営業資料をすばやく探せるようになりました。
ここにいけば必要な情報がまとまっている状態を作る
業務やプロジェクトの活動では、大量のコミュニケーションや資料が生成されます。その情報がバラバラに存在すると、関係者全員で情報を探し出し、まとめ直し、保管する作業が必要になります。
Jiveの場合、コミュニケーションも資料の保管も、ひとつのグループ内で行えます。つまり、業務やプロジェクトに関する全ての情報を一箇所に集約することができるのです。「ここにいけば必要な情報がまとまっている」状態を作れるため、チーム内の情報共有が簡単に実現できます。
事例:新規事業立ち上げでの情報共有
F社では、新規事業の立ち上げにあたり、Jiveを活用して関係部門の情報共有を行いました。プロジェクトチームのメンバーで1つのJiveグループを作成し、そこに事業計画書、市場調査資料、会議資料などを保管していきました。
また、新規事業に関するディスカッションでは、方針決定のプロセスや判断根拠が残されていきます。ブログ機能では、各部門のリーダーから最新の進捗状況が随時発信され、コメント投稿によってメンバー間で議論が行われていました。
あらゆる情報がこのグループに集約されたおかげで、後から関係者全員が同じ経緯とフェーズを確認できるようになりました。新規事業開始前の準備活動から、実際の立ち上げ、そしてフェーズの切り替わりまでを、ひとつのグループで完結できたことが大きなメリットになりました。
一方で、G社ではSharepointとメールを使い分けて情報共有していました。Sharepointにはプロジェクトドキュメントがあり、メールではディスカッションの経緯が記録されているものの、それらがバラバラに存在していました。そのため、最新の情報を把握するのが非常に大変で、部門間で認識のズレが生じがちでした。
Jiveの利点を最大化する情報共有の実践
以上の事例からも分かるように、Jiveはフロー情報とストック情報を一元的に管理でき、情報の属人化のリスクが低く、業務に関する総合的な情報ハブを作れるというメリットがあります。
ただし、これらの利点を最大限に活かすには、Jiveを単なる「ファイル共有の場所」としてではなく、本来の機能を最大限活用する必要があります。つまり、用途に合わせてブログ、ディスカッション、質問などを使い分け、カテゴリ分けやステータス設定を行い、ポータルを通じてグループ間の関連付けを行うことが重要になります。
また、組織的にJiveを活用する文化を醸成していくことも欠かせません。情報の公開をJiveに一元化し、ナレッジマネジメントの考え方を浸透させていく必要があるでしょう。そうすることで、Jiveは単なるツールに留まらず、企業の知的資産を有効活用し、業務効率と生産性を高めるための基盤となり得ます。
Jiveの機能面ではSharepointに劣る部分もありますが、情報共有と業務効率化の点では、Jiveは他のソリューションにはない大きな強みを持っています。組織的な取り組みによって、その強みを最大限に生かすことで、企業の競争力が強化されます。